🚪 VGW(仮想プライベートGW)

VPCの「正面玄関」。各VPCに1つだけ設置し、Direct ConnectやVPNからの通信を受け入れる入口

🔀 DXGW(DX Gateway)

複数リージョンのVGWを束ねる「中央インターチェンジ」。1本の専用線で世界中のVPCに接続可能にする

🛣️ VIF(仮想インターフェース)

物理回線の上に作る「論理的な車線」。Private / Public / Transit の3種類で通信先を分ける

たとえ話:「高速道路ネットワーク」で理解する

AWS Direct Connectの仕組みは「自社専用の高速道路ネットワーク」にたとえると分かりやすくなります。

全体のたとえ

あなたの会社(オンプレミス)から、AWSという巨大な商業エリアへ「専用の高速道路」を引くとイメージしてください。インターネット(一般道路)を通らず、専用レーンで高速・安全に行き来できるのがDirect Connectです。

AWS用語 たとえ(高速道路) 役割
DX接続(物理) 🛤️ 専用の高速道路そのもの オンプレミスとAWSを結ぶ物理的な回線
VIF 🛣️ 高速道路の「車線」 1本の道路に複数の行き先車線を作る
VGW 🚪 各施設の「正面玄関ゲート」 VPCの入口。1施設に1ゲートのみ
DXGW 🔀 中央インターチェンジ 1つのICから全国の施設へ分岐
Transit VIF + TGW 🏙️ 大型ジャンクション 大規模ネットワークのハブ

通信の流れ:データはどう旅するか?

オンプレミスからVPCまで、データが通過する各コンポーネントの順番を見てみましょう。

オンプレミス DX ロケーション AWS クラウド ルーター オンプレミス 物理接続 1/10/100 Gbps Private VIF VLAN 100 Public VIF VLAN 200 DX Gateway グローバル VGW 東京リージョン VGW 大阪リージョン VPC-A 10.0.0.0/16 VPC-B 10.1.0.0/16 AWSパブリック S3, DynamoDB等

📌 データの旅路(Private VIF経由)

オンプレミスのルーター → 物理接続(光ファイバー)→ Private VIF(VLAN車線)→ DX Gateway(中央IC)→ VGW(VPC玄関)→ VPC内のリソース、という順にデータが旅します。Public VIFの場合はDXGW/VGWを経由せず、直接AWSパブリックサービスに到達します。

VGW(Virtual Private Gateway)

VPCにアタッチする「正面玄関ゲート」。Direct ConnectやVPNからの通信は、必ずこのVGWを通ってVPCに入ります。

たとえ:ビルの正面玄関ゲート

VPCを1棟のビルとすると、VGWはその「正面玄関のセキュリティゲート」です。外から来る人(データ)はすべてこのゲートを通ります。ビル1棟につきゲートは1つだけ。来訪者がDirect Connect(専用車)で来てもVPN(タクシー)で来ても、入口は同じです。

VGWの主な特徴

リージョンスコープ

Region-level resource

VGWは特定のリージョン内に作成され、1つのVPCにのみアタッチ可能です。逆に、1つのVPCにアタッチできるVGWも1つだけです。

接続先

Connection targets

VGWに接続できるのは、Direct Connect(Private VIF)Site-to-Site VPNの2つです。どちらもVGWを経由してVPCにアクセスします。

ルート伝播

Route propagation

VGWが学習したオンプレミスのルートを、VPCのルートテーブルに自動伝播させることができます。手動でルートを追加する必要がありません。

ASN設定

Autonomous System Number

VGW作成時にカスタムASNを指定可能です(デフォルトは64512)。BGPピアリングで使用され、オンプレミスASNとの重複は不可です。

Direct Connect Gateway(DXGW)

複数リージョン・複数アカウントのVGWを1つにまとめる「中央インターチェンジ」。1本のDirect Connectで世界中のVPCへ。

たとえ:高速道路の中央インターチェンジ

DXGWは高速道路の「中央インターチェンジ(IC)」です。1つのICに入れば、東京方面・大阪方面・福岡方面、どの出口(VGW)にも行けます。DXGWがなければ、各方面ごとに個別の道路(VIF)を引く必要がありました。中央ICのおかげで1本の道路から全方面に分岐できるのです。

DXGWの主な特徴

グローバルリソース

Global resource

DXGWは特定リージョンに属さないグローバルリソースです。世界中のリージョンにあるVGWを束ねることができます。

接続上限

Association limits

1つのDXGWには最大20個のVGW(またはTGW)を関連付けできます。最大30個のPrivate VIF / Transit VIFも関連付け可能です。

クロスアカウント

Cross-account sharing

DXGWは別のAWSアカウントのVGWとも関連付け可能です。マルチアカウント環境でDirect Connect回線を共有できます。

制限事項

Limitations

DXGW経由ではVPC同士の通信(VPC-to-VPC)はできません。あくまでオンプレミス↔VPC間の通信をルーティングするハブです。

⚠️ DXGWなしの場合 vs ありの場合

DXGWなし:各リージョンのVGWごとに個別のPrivate VIFが必要 → 管理が煩雑、VIF数が増大
DXGWあり:1つのPrivate VIFでDXGWに接続 → そこから複数リージョンのVGWへ分岐 → 管理がシンプル

VIF(Virtual Interface)

1本の物理回線上に作る「論理的な車線」。VLAN IDで区切られ、目的別に3種類を使い分けます。

たとえ:高速道路の車線

1本の高速道路(物理回線)に、行き先別の「車線」を引くのがVIFです。「VPC行き車線(Private VIF)」「AWSサービス行き車線(Public VIF)」「大型ジャンクション行き車線(Transit VIF)」の3つがあります。各車線はVLAN IDという番号で区別されます。

3種類のVIFを比較

Private VIF

プライベート仮想IF

VPCへのプライベートIP通信用。VGWまたはDXGWに接続します。EC2やRDSなどVPC内リソースにプライベートIPで直接アクセスできます。

  • 接続先:VGW または DXGW
  • BGPピアリングが必要
  • MTU: 1500 or 9001(ジャンボフレーム)

Public VIF

パブリック仮想IF

AWSパブリックサービス(S3、DynamoDB、SESなど)へのアクセス用。VGW/DXGWを経由せず、直接パブリックエンドポイントに接続します。

  • 接続先:AWSパブリックエンドポイント
  • パブリックIPが必要
  • MTU: 1500 のみ

Transit VIF

トランジット仮想IF

Transit Gateway(TGW)に接続するためのVIFです。DXGW経由でTGWに接続し、TGWから大量のVPCへ一括ルーティングできます。

  • 接続先:DXGW → TGW
  • 大規模ネットワーク向け
  • MTU: 1500 or 8500

VIF種類別 比較表

項目 Private VIF Public VIF Transit VIF
接続先 VGW / DXGW AWSパブリック
エンドポイント
DXGW → TGW
通信範囲 プライベートIP パブリックIP プライベートIP
主な用途 VPC内リソース
へのアクセス
S3, DynamoDB等
パブリックサービス
大規模マルチVPC
ネットワーク
DXGW経由 可能(推奨) 不可(直接接続) 必須
ジャンボフレーム 対応(9001) 非対応 対応(8500)
BGP 必須 必須 必須

3つのコンポーネントの関係性まとめ

VIF・DXGW・VGWがどのように連携するか、接続パターン別に見てみましょう。

接続パターン比較

シンプル構成(DXGW不使用)

Private VIF → VGW → VPC(単一リージョン・単一VPC向け)

1つのリージョンに1つのVPCだけならDXGWは不要。VIFとVGWを直接接続するのが最もシンプルです。

標準構成(DXGW使用)

Private VIF → DXGW → 複数VGW → 複数VPC(マルチリージョン向け)

最も一般的な構成。DXGWを挟むことで1本のVIFから複数リージョン・複数VPCへ接続できます。

大規模構成(TGW連携)

Transit VIF → DXGW → TGW → 大量VPC(エンタープライズ向け)

数十〜数百のVPCがある場合。TGWがハブとなりVPCルーティングを集約します。VPC間通信も可能。

パターン1:シンプル構成 Private VIF VGW VPC 単一リージョン・単一VPC パターン2:標準構成(DXGW使用) Private VIF DX Gateway VGW (東京) VGW (大阪) VPC-A VPC-B マルチリージョン パターン3:大規模構成(TGW連携) Transit VIF DX Gateway Transit GW VPC-1 VPC-2 VPC-3 VPC-4 VPC-N 大量VPC + VPC間通信可

どの構成を選べばいい?判断フローチャート

自分の環境に合った接続パターンを選ぶための判断基準です。

接続先VPCは複数リージョン? Yes No VPCの総数は多い(10+)? Yes No パターン3 Transit VIF + DXGW + TGW パターン2 Private VIF + DXGW + VGW VPCは1つだけ? Yes No パターン1 Private VIF + VGW(直接) パターン2 Private VIF + DXGW + VGW AWSパブリックサービスにもアクセスしたい? → 上記に加えて Public VIF を追加作成

実装例:CLI コマンド

各コンポーネントの作成手順をAWS CLIで見てみましょう。

Step 1:VGWの作成とVPCへのアタッチ

# VGWを作成(カスタムASN指定) aws ec2 create-vpn-gateway \ --type ipsec.1 \ --amazon-side-asn 65000 # VGWをVPCにアタッチ aws ec2 attach-vpn-gateway \ --vpn-gateway-id vgw-xxxxxxxxx \ --vpc-id vpc-xxxxxxxxx # ルート伝播を有効化 aws ec2 enable-vgw-route-propagation \ --route-table-id rtb-xxxxxxxxx \ --gateway-id vgw-xxxxxxxxx

Step 2:DX Gatewayの作成

# DXGWを作成 aws directconnect create-direct-connect-gateway \ --direct-connect-gateway-name "my-dxgw" \ --amazon-side-asn 64512 # DXGWにVGWを関連付け aws directconnect create-direct-connect-gateway-association \ --direct-connect-gateway-id dxgw-xxxxxxxxx \ --gateway-id vgw-xxxxxxxxx

Step 3:Private VIFの作成

# Private VIFを作成(DXGW経由) aws directconnect create-private-virtual-interface \ --connection-id dxcon-xxxxxxxxx \ --new-private-virtual-interface \ virtualInterfaceName="my-private-vif",\ vlan=100,\ asn=65001,\ authKey="my-bgp-key",\ amazonAddress="169.254.100.1/30",\ customerAddress="169.254.100.2/30",\ directConnectGatewayId=dxgw-xxxxxxxxx

ベストプラクティスと注意点

設計・運用で押さえるべきポイントをまとめます。

冗長化

本番環境では2本の物理接続を異なるDXロケーションに用意し、それぞれにVIFを作成してください。1本が障害になっても自動フェイルオーバーが可能です。

CIDR重複回避

DXGW経由で複数VPCに接続する場合、VPC同士のCIDRが重複しないよう設計してください。重複があるとルーティングが正しく動作しません。

BGP認証

VIF作成時にBGP認証キー(MD5)を設定しましょう。不正なBGPピアからのルート広報を防ぎ、セキュリティを強化します。

CloudWatch監視

ConnectionStateVirtualInterfaceBpsEgress/Ingressメトリクスを監視し、接続断やトラフィック異常をアラートで検知してください。

❌ よくある設計ミス

1. DXGW経由でVPC間通信ができると思い込む → DXGWはオンプレミス↔VPC間のみ。VPC間はVPCピアリングやTGWが必要です。
2. Public VIFにDXGWを関連付けようとする → Public VIFはDXGW不要・不可。直接AWSパブリックサービスに接続されます。
3. 単一回線で本番運用する → 必ず冗長回線を用意してください。DXは物理接続のため、回線障害時は復旧に時間がかかります。

よくある質問

VGWとIGW(Internet Gateway)は何が違うの?
IGWはVPCをインターネットに接続するためのゲートウェイです。一方VGWはDirect ConnectやVPNでオンプレミスと接続するためのゲートウェイです。どちらもVPCの「出入口」ですが、接続先が異なります。IGW = 一般道への入口、VGW = 専用道路への入口、とイメージしてください。
DXGWは料金がかかるの?
DXGWの作成・利用自体に追加料金はかかりません。課金されるのはDirect Connectのポート時間料金と、データ転送量です。DXGWを挟んでも転送量は変わらないため、積極的に活用すべきです。
1つの物理接続にVIFはいくつ作れるの?
専用接続(Dedicated Connection)の場合、1つの物理接続あたり最大50個のVIFを作成できます(Private + Public + Transit の合計)。ホスト接続(Hosted Connection)の場合は1つの接続につきVIF 1つのみです。
Transit VIFとPrivate VIFはどう使い分ける?
Private VIFはDXGW経由で個々のVGW(= VPC)に接続するため、VPC数が少ない場合に適しています。Transit VIFはDXGW経由でTGWに接続し、TGWから大量のVPCに一括接続できます。目安としてVPCが10個以上、またはVPC間通信も必要な場合はTransit VIFが有利です。

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